バランゴンバナナとマスコバド糖の輸出を行っているオルター・トレード社（以下、ATC）は、今年で25周年を迎えました。そこで今回は、2013年7月27日（土）にネグロス島のバコロド市内で開催されたATC25周年記念式典の様子や同式典でお披露目があった新事業「BOX」についてご報告いたします。

各地からのゲストが集合

式典当日は、残念ながら天気が悪かったものの、日本や韓国からのゲストも含め約240人が集まりました。この25年間でATCがつながってきた各地の生産者組合、スタッフ、消費者団体が一堂に会する、大規模な記念式典となりました。

農家のマカオさんと子どもたちの交流

式典は、料理デモンストレーション、バコロド市内に暮らす子どもと農家（日本にも来日したことがあるマカオさん）との交流、農産物の販売など、朝から夜まで様々なイベントで盛り上がりました。また、午後に開かれたパートナーズ・フォーラムでは、バランゴンバナナ及びマスコバド糖の民衆交易に関わってきた生産者、日韓の生協などから報告があり、様々な苦難を乗り越えてきた25年間の歴史を振り返ると同時に、今後の民衆交易のあり方についても話されました。

ATCの新たな取り組み

会場では、ATCの新たな取り組みである「BOX（Bio-Organic eXchange）」のお披露目もありました。BOXは、日本の生協が行っているような農産物の宅配サービスであり、ATCが関わりを持っている小規模生産者が農薬・化学肥料を使用せずに育てた農産物を、毎週または隔週で消費者に届けるシステムです。生産者にとっては、定期的で安定した売り先があることによって、過剰生産を避け、安心して農産物を作ることができる点。消費者にとっては、誰が作ったかがわかり、安全で健康に良い食品を食べられる点。それがBOXの利点です。また、自分が食べている農産物がどのように作られているのかを知ることが可能になり、消費者のエンパワーメントにもつながるでしょう。

BOXを購入したスタッフのダーリンさん

BOXで届けられる農産物は、環境に負荷を与えずに作られているだけでなく、生産者と消費者がお互いに尊重し、気遣い、感謝する関係性を築くことをめざしています。また、そのような関係性を築くことが、ダンピングなどによって市場に入ってくる低価格の農産物から生産者を保護することにもなります。このような事業はフィリピンでは一般的でなく、BOXも利用人数21人からスタートしました。そのほとんどがATCのスタッフで、まだまだ規模としては小さいものの、今後利用人数を増やしていき、生産者にとって安定的な有機農産物の販売先となるよう、またフィリピン国内の生産者と消費者の関係性を強化していけるよう、ATCの奮闘は始まったばかりです。

参加者の声：

参加者の集合写真

同式典には、砂糖キビ生産者、バナナ生産者、マスコバド糖製糖工場で働いているスタッフ、バナナの集荷に関わっているスタッフなど多くの関係者が出席しました。参加者から、ATCが地域に提供しているサービスへの感謝の気持ちなど、様々な意見・メッセージが寄せられました。以下、参加者から寄せられた意見・メッセージの一部をご紹介します。

• 「バランゴンバナナのおかげで自分の生活を安定させることができたので、ATCの仕事を通して、バランゴンバナナ生産者の畑での生産性を向上させ、生産者の生活の向上の手助けをしたいです。」（ATCスタッフ・地域開発担当）
•  「マスコバド糖製糖工場で働くことで、安定した仕事と社会保障を得ることができました。」（マスコバド糖製糖工場作業員）
•  「バランゴンバナナからの収入で3人の子どもを高校に通わせることができました。また、砂糖キビの収入で家の修繕ができました。」（バランゴンバナナ・砂糖キビ生産者）
•  「ATCとパートナーになる前の暮らしは、現金収入が少なく大変でしたが、パートナーになってからは選択肢が増えました。お米などからの収入源もできたので、砂糖キビ畑での仕事がない時でも現金収入を得ることができます。」（砂糖キビ生産者協会メンバー）
•  「トレーニングを提供してくれるATCに感謝しています。」（バランゴンバナナ生産者）

式典参加者からは、ATCへの感謝の気持ちのみでなく、今後のATCの発展を願う意見が多く寄せられ、スタッフ・生産者のATCへの期待の大きさを感じることができました。25周年式典を終え、新たな25年に向け歩み始めたATC。BOXという新しい事業も開始しました。多くの人びとの期待に応えるための新たな旅路のスタートです！

黒岩竜太（くろいわ・りゅうた／ATJ）