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手わたしバナナくらぶニュース

229号(2015年3月+4月)【コラム】小商い開店中(11)あさひ屋ベーカリー

マスコバド糖を使った人気のパン

石川県白山市の「あさひ屋ベーカリー」は、自然培養の天然酵母とマスコバド糖を使ったパンが人気のパン屋さんで、今では地元以外にも遠方からわざわざパンを買いに来られるお客さんも多いお店です。

229小商い_店主

店主の大石さん

店主の大石旭さんは、神戸出身。大学時代から金沢での生活を始め、実家が電気屋だったことから電気工事の会社に就職したそうです。その仕事を1年余りで辞めた頃、いつもパンを買いに行っていたお店がたまたまアルバイトを募集していたことからパン屋で働き始めました。パン屋で働き始めてパン作りの魅力に惹かれた大石さんは、パン職人になることを決意し、3年半の修行を経て、2004年に金沢市から白山山麓に向かう鶴来(つるぎ)街道沿いに自分のお店を開店しました。

厳しい時期を経て、コミュニティに愛される存在に
お店の外観

お店の外観

大石さんにとって、鶴来は大学時代に白山登山に通ったことから愛着があった土地でした。一方で、地縁血縁のまったくない場所だったために、開店当初はお客さまがほとんど来ない状況が続き、生後間もない子どもを抱えて女将さんがパンをあちこち売りに回っていたそうです。閉店後には、たくさん余ったパンを箱に詰め、深夜まで知り合いに配り歩くこともたびたびだったとか。「その時期は、非常につらかったです。でも、どのようにしたら自分の納得のいくパンを作れるか、そして地域の皆さんに美味しいパンを食べていただきたいという一心でやっていました。パンに対する熱意と努力が実り、そのうちに地域に受入られて、今ではたくさんのお客さまが足を運んでくれるようになりました」と大石さん。

薪ストーブのある店内

薪ストーブのある店内

2013年には、旧店舗の向いに、新店舗をオープンさせました。薪ストーブのある素敵な空間の店内には、購入したパンを食べられるスペースもあり、お客さん同士で話に花が咲いている様子も見られます。さらに、そのスペースで「ベビーマッサージ」の講習会が開かれたり、地域で小物を作っているお母さん方が展示・販売する場としても使われたり、コミュニティ・スペースにもなっています。

こだわりが光る原料選び

近くにある「コミュニティトレードal」というお店から紹介されたフィリピンのマスコバド糖。「価格的にもリーズナブルで、この砂糖がフィリピンの人びとの助けになり、自分の作っているパンが活動に貢献できることがうれしくて使っています。使いづらさはなく、コクがあって美味しい砂糖ですよ」というお話の通り、あさひ屋ベーカリーでは、すべてのパンにマスコバド糖を使ってくださっています。

遠方からのお客さまも多い

こだわりのパンがずらり

他の原料についても、こだわりが光ります。酵母は、レーズンから自分でおこしたもの。牛乳は、地元の牧場からパスチャライズ牛乳(高温殺菌される市販品と違い、85℃で15分かけて殺菌されるので栄養素が変性しない)を購入して、パンやクリームに使用。サンドイッチは、地元の野菜が取れる夏場には積極的に利用しています。

2015年3月14日には、北陸新幹線が金沢まで開業、東京から金沢まで2時間半で行くことができます。金沢駅からJR北陸本線、北陸鉄道石川線と乗り継いだ鶴来駅があさひ屋ベーカリーの最寄駅。なお、北陸鉄道石川線では、3月中旬から11月まで電車に自転車を持ち込めるサイクルトレインも走るようですよ。今回は電話で取材させていただきましたが、ぜひ一度訪問してみたいと思います。みなさんもぜひ!

持井啓吾(もちい・けいご/ATJ)

あさひ屋ベーカリー
石川県白山市鶴来本町1-ワ 101-1
電話:076-272-4224
定休日:日曜日 月曜日
Facebookページ:https://www.facebook.com/Asahiyabakery

みなさんは「小商い」という言葉を聞いたことがありますか?『小商いのすすめ』(2012年、ミシマ社)の著者である平川克美さんは「自分の手の届く距離、目で見える範囲、体温で感じる圏域でビジネスをしていくこと」だと説明しています。グローバル化によって、一握りの大企業が世の中を席巻する昨今、私たちの身の回りには、誰がどこでどのように作ったかが見えにくいモノがあふれてきています。その裏では、環境破壊や資源を巡る争い、遺伝子組み換え作物の急増も。この事態を変えていく鍵が「小商い」にあるかも…!と考え、その実践者にお話を聞きます。