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台風ヨランダ被害から1年が経って~ASINからの報告~

2013年11月8日にフィリピンを襲った台風ヨランダから1年以上が経過しました。復興に向けて様々な動きがあったフィリピンにおける社会状況、またASIN(アシン/Alternative Solidarity Initiative Networkの略)の活動に関する報告が届きました。

台風ヨランダの被災地では……

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救援物資をもらった住民たち(マンバカヤウ島)

ネグロス島北部、セブのバンタヤン島、その近隣の島々が深刻な被害を受けました。台風ヨランダは、海岸沿いにある家屋や漁船、作物を破壊し、台風対策を十分にしていなかった住民たちを襲い、たくさんの被災者が出たのはご存じの通りです。

被災した住民たちの多くは近隣の学校などに避難しましたが、何百もの家族に行きわたる十分な水はなく、トイレや下水の設備もないために衛生的でない場合が多かったようです。そのため、避難所では、風邪やインフルエンザ、下痢などの病気が子どもたちを中心に蔓延し、体力のない年配の方たちにも影響が出ました。この病気の流行により、避難所にとどまるのではなく、危険が残る破壊された家屋に戻る選択をした人たちも少なくなかったといいます。

被害にあった住民に対して迅速な対応をした地元の自治体もありましたが、多くの場合、その対応は不適切でとても遅いものでした。救援物資は十分にあったにも関わらず、被災者の元には届かず、どこかで保管された後に公設市場で売られることもありました。家を失った被災者が一時的にシェルターとして使えるように国連が配布したテントの布を売ろうと、ASINのボランティアスタッフに話を持ちかけてきた人がいたケースもあります。

救援物資の配給を被災者たちに約束をした政治家たちは、あたかも自分個人の寄付で支援しているように見せ、さながら選挙活動のようなふるまいでした。政府の救援物資は政治的な目的に活用され、物資の滞留・貯蔵・転売のスキャンダルが溢れ、中央政府から地方行政のレベルまで、機能不全の状態が露わになりました。

台風が去った直後から、国際NGOも地元のNGOも救援活動に素早く乗り出しました。国際NGOは代表者たちをすぐに現場へ送り、被害の状況分析を実施し、被災地域の緊急救援と復興の計画を立てました。多くのNGOが、家屋を失った被災者の再定住地をフィリピン政府が提供しないこと、対応が遅いことに不満の声を上げていました。こうした状況から、独自の判断で動き、行政との連携をやめるNGOが数多く出てきました。そうしないと支援活動が進まなくなってしまうからです。政府は、海外から届けられる緊急物資に対しての課税まで求めていました。

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マンバカヤウ島で救援物資を配布中

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青少年や子どもに対してトラウマのワークショップを開催

ASINの活動報告

台風ヨランダが去った2ヵ月後の2014年1月、ネグロス島北部および周辺の島々への支援活動をするために、ASINが組織されました。立ち上げメンバーは、カネシゲファーム(KF-RC)、バコロド教区ソーシャルアクションセンター、ハートアノニマス(レコレトス会)、DIHON(アーティストグループ)、カディス女性ボランティアグループです。それぞれが独自の活動をしていますが、台風被災者に対する支援に関して、必要な時に協働するためのネットワーク組織です。

ASINの最初の活動は、バンタヤン島の一部であるマンバカヤウ島へ行き、被害状況の分析と地域再建の初期計画を立てることでした。その後、実質的な復興に向けた活動はハートアノニマスが担いました。ASINとしては、ソーシャルアクションセンターとハートアノニマスが生計プログラムを実施する地域にてパートナーシップを組んで活動したり、DIHONが中心になって、自然災害に関する教材を制作して学校や地域に配布し、母や子どものためのワークショップを実施したりしました。「災害」を題材にした絵画の展示会も開催しています。

カディス女性ボランティアグループは、カディス市内での救援・復興活動を進め、ASINとしても、彼女たちの助言に基づき、完全に家屋が破壊されてしまった4家族の家を再建しました(コンクリートと木を使った家)。その他、一部が破損してしまった家の修繕なども実施しました。

家屋再建や修繕に関しては、地方行政の条例に活動が制限されるということが起きました。条例は、海岸や川沿いの「危険地帯」での家屋再建を禁じるもので、この条例に基づき、そうした場所に住んでいる人たちは家を移転するように通達されました。しかし、通達があっただけで、具体的な再定住地が示されるわけではありません。移住したいと思っている家族がいて、ASINでも支援をしたいと考えましたが、再定住地の確保がない限り家屋再建を実施できない状況が続きました。この条例により、元々住んでいた「危険地域」にある家屋の修繕をすることも難しい状況でした。ボランティアメンバーが市に対して再定住地を定めるよう呼びかけましたが、現在まで何も動いていません。家屋再建を支援できた4家族は、その家屋が市の指定する「危険地域」ではなかったからでした。台風被害から一年以上が経過し、誰が本当の被災者であるかを見極めるのが難しくなってきているため、家屋建設や修繕の支援は一旦中止することを決めました。

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ASINが提供した資材で家を建て直している様子

Repairing and extending the house the Rosales family at the relocation site in Toglawigan. 3

カディス市内の家屋再建

Repairing the house of the Villa Family. 2

台風で壊れた家の一部を修繕

Ando San with ASIN volunteers. 2

カディス女性ボランティアグループのメンバーと家屋再建をした女性

カディス市での給食プログラム

家屋再建や修繕の実施と合わせて、カディス女性ボランティアグループでは、カディス市のいくつかの地区にて給食プログラムを実施しました。

●ゾーン6地区(毎週土曜日に実施)

給食プログラム

給食プログラムの様子

子どもの人数:100人
給食プログラム開始時期:2014年2月
給食プログラム終了時期:2014年6月

<その他の活動>

  • 母と子のワークショップ
  • 健康と衛生、栄養に関するオリエンテーション
  • 救援物資配布、洋服、サンダルを何人かの子どもたちに配布
  • ソーシャルアクションセンターからの救援物資の配布

●カルメン再定住地、サンバッグ地区、ダガ地区(毎週土曜日に実施)

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ダガ地区にて

子どもの人数:100人
給食プログラム開始時期:2014年6月
給食プログラム終了時期:2014年12月

<その他の活動>

  • 母と子のワークショップ
  • 健康と衛生、栄養に関するオリエンテーション
  • 文房具、サンダル、薬を母と子どもたちに配布
  • バランガイの医療従事者と共に健康調査、予防接種の実施
  • ハートアノニマスと共にチャペルの再建
  • ソーシャルアクションセンターからの救援物資の配布

●ボニト地区、ゾーン6地区(毎週土曜日に実施)

子どもの人数:75人
給食プログラム開始時期:2014年4月
給食プログラム終了時期:2014年12月

<その他の活動>

  • ソーシャルアクションセンターからの救援物資の配布
  • 健康と衛生、栄養に関するオリエンテーション

●ゾーン4、5地区(二つの地区での共同開催)

At Barangay 4 and 5, Cadiz City. 3

ゾーン4、5地区にて

子どもの人数:50人
給食プログラム開始時期:2014年5月
給食プログラム終了時期:2014年9月

<その他の活動>

  • 健康と衛生、栄養に関するオリエンテーション
  • 母と子のワークショップ

●ティナンパアン地区(毎週土曜日に実施)

子どもの人数:100人
給食プログラム開始時期:2014年9月
給食プログラム終了時期:現在も継続中

●カピスピサン地区(毎週土曜日に実施)

子どもの人数:45人
給食プログラム開始時期:2014年9月
給食プログラム終了時期:現在も継続中

ティナンパアン地区とカピスピサン地区で現在実施中の2つの給食プログラムは、実施状況を鑑みて、2015年2月には終了することを予定しています。

ASINでは、短期的な緊急支援ではなく、被災者が復興した後の生計を支援するところまで関与したいと考えており、今後は生計プログラムのサポートや、今後災害が起きたときに対応するための支援体制の整備などを検討していきたいと考えています。

報告:アルフレッド・ボディオス(ASINメンバー)