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2012年4月9日~20日収入源の多様化に向けた取り組みが進んでいます

4月上旬、エルメラ県の2つのコミュニティグループを訪問してきました。APLAとの協働をはじめて約一年間半、「コーヒー生産者グループ」から「収入の多様化、安定した地域づくりをめざす地域のグループ」としての高い意欲を感じるようになり、小さくとも確実な変化が見えてきています。

Fitun Caetano(フィトゥン・カイタノ)

「自分たちには土地もやる気もある。あとは、安定した収入を得られるようにするために、どんな野菜や果物を植えればいいのか(=ここの風土・気候にあうのか)わからないことが多いので、その辺りを後方支援してほしい」という言葉。フィリピンの農民との交流によって気づいた「ないものねだりではなく、あるもの探し」というのが、しっかり腑に落ちている。具体的には、以下のような活動を進めてきている;

  • 養殖:1月に稚魚を放流して以降、メンバー全員で協力して、コミュニティ内の2カ所の養殖池で合計600尾以上を育てている。魚の種類は東ティモールでは一般的なIkan Nila(テラピア)で、昨年末に実施したトレーニングに協力してくれた水産局のロウレンティーノさんによれば、約半年で収獲できるサイズまで育つとのこと。現在、市販のエサと地域内で生産したキャッサバなどを利用してつくったエサを混ぜて与えているが、前者の割合を減らしていきつつ栄養価の高さを維持していくことが目標。また、過去に養殖に挑戦したときに魚が盗まれてしまった経験があるため、今回はメンバー全員で協力して養殖池の脇に小さな小屋を建て、メンバーの一人が住み込みで管理することになった。
  • 80年代まで稲作をしていたという川のすぐそばの土地

    耕作(作物の多様化):昨年Permatilのワークショップで習った堆肥づくりに挑戦しているが、これまでなかなか上手くいっていない。日当たりや湿気など、様々な要素について学び続けて、自分たちのものにしていく必要がある。それ以外に、コーヒーチェリー(果実)からコーヒー豆を取り出した残りかす(コーヒーは種の部分が商品になり、外側の実は商品価値がない)が土づくりに有効だということもわかってきたので、今後の活用の仕方も考えていきたい。さらに、今回の訪問で、集落から1時間ほど離れた親族の土地で80年代前半まで米をつくっていたことが判明した。限られた現金収入をはたいて輸入米を買い続けるのではなく、米を自給できるようになる日も夢ではない!? とみんなでひとしきり盛り上がった。現在、東ティモールはコンバインを導入して農業の「効率化」を推し進めようとしているが、そうしたやり方は、化石燃料や化学肥料といったさらなる依存を生み出すことにつながることをわたしたちはすでに学んでいる。そうではなく、地域に根ざした方法での稲作を取り戻していけるよう、焦らずに可能性を探っていきたい。

  • 女性グループ:家計簿づけを開始してから一年間が経過した。忙しいときなど継続的に記録できない、記入ミスがある、などといった課題は残りつつ、全体的に助け合いながらとてもよくがんばった。一年間の家計簿づけの結果から、どの家庭も支出の大半を食費が占めており、かつ大幅な赤字だという現状が改めて確認できた。二年目の今年は、より精度の高い記録をつけられるように努力すると同時に、どうやって支出入の状況を改善していけるかも考えていきたい、とリーダー。

GATAMIR(ガタミル)

メンバーで話し合った結果、金額は少ないものの、2012年から、各メンバーが毎月25セントずつ積立をおこない、グループの資金をつくっていくことを開始した。組合形成に向け、小さいけれども大きな一歩を歩みだしている。具体的な活動としては;

元気に育っている子豚

  • 養豚:昨年にコーヒー代金の前払いとして子豚の供給があったが、気候や環境に対応できず約6割が病気などで死亡してしまうという残念な結果に終わってしまった。豚が生き残ったメンバーは引き続き継続して飼育しているが、グループの活動として養豚を続けていく結論には至っていない。とはいえ、家畜は重要な存在なので、長期的には、標高が1300メートル近いメルトゥト村に適した方法を発展させていきたい。
  • 養殖:Fitun Caetano同様、コーヒー以外に柱となる収入源の確立のために淡水魚の養殖をしていきたい、とグループのメンバーたちで協力して地域内に養殖池を造成した。まずは基礎的な技術・知識を身につけた上で、小さな規模で養殖を開始することになった。
  • GATAMIR2

    堆肥づくりをしっかり習得したメンバー

    耕作(作物の多様化):フィリピンとの交流、Permatilのワークショップを経て、堆肥づくり・コーヒー畑でイモやバナナを栽培・これまで栽培していなかった果実の苗木を植える、といった具体的な取り組みを実践し始めている。また、老朽化しているコーヒーの木のメンテナンスにも積極的。耕作に関しては、Fitun Caetanoよりも実践が進んでいるので、コーヒー収穫シーズン後に2つのコミュニティ間の交流を実施して経験共有の機会をつくろう、という話になっている。

  • 女性グループ:これまでに食品加工のワークショップなどは実施してきているものの、具体的な活動につながってきていなかった。女性たちだけで主体的にまとまって活動をしていくのが難しいため、男性メンバーのフォローのもと、再スタートを切る。具体的には、もうすぐ収穫時期を迎えるオレンジを利用したワインづくりに再度挑戦する。

東ティモールは、これからコーヒーの収穫シーズンに入り、各グループのメンバーも現地のATTのスタッフも良質のコーヒーを届けるためにおおいそがしとなりますが、コミュニティの主体的な動きを引き続きサポートしていきたいと思います。

報告:野川未央(のがわ・みお)