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2012年6月9日(土)福島百年未来塾・第2回の報告

6月9日、福島県郡山市で福島百年未来塾の第2回を開催しました。小雨のなか、『ミツバチの羽音と地球の回転』の上映と、鎌仲ひとみ監督のトークに、約80人が集まりました。

挨拶をする二本松有機農業研究会の大内さん

映画の上映終了後に登場した鎌仲監督は、歯切れのよい快活なトークで会場を沸かしてくれました。そして途中からは、特別ゲストとしてTEAM二本松の佐々木さんも参加。佐々木さんたちは、原発事故後、市民測定室を立ち上げて活動しています。実際に食品を計測してきた経験から、8割くらいからは放射能は検出されないとのこと(検出限界10ベクレル)。検体として持ち込まれたお米を捨てるよりはいただいくほうがよいと、検査担当者たちは、この間お米をまったく買っていないというエピソードも。子育て真っ最中の佐々木るりさんもトークに参加してくださりました。「子どもたちは既にたくさんの外部被曝をしているので、できるだけ西の野菜を食べさせたいと思っているけれど、そのための野菜もたくさんの人が支援してくれている」とのコメントの一方で、検査しても放射能が検出されない地元産の野菜もあるので、検査結果を「見える化」して、自分たちが開催している市場などでも販売を始めていることも話してくれました。

トーク終了後に監督を交えて開かれた交流会には、二本松有機農業研究会のメンバーの皆さん以外にも、宮城県や山形県の農民の方や、郡山市で子育てをしているお母さんたち、そのほか様々な立場の人が参加しました。

鎌仲監督を囲んでの交流会

ここでの話題のひとつは、やはり「食べもの」。福島の農家の方からは「同じ10ベクレルが検出されたとしても、埼玉産と福島産がある場合、埼玉産が選ばれる」、「福島産は同じ土俵にすら立てない」という思い発言がありました。一方で、子育てをするお母さんたちは「安心と安全は違う。福島産だと安心できない」という心情を正直に話してくれました。作物をつくっている人と食べる人、それぞれに抱えた苦悩やジレンマがあります。今では双方の気持ちが一方通行に見えますが、こういった話し合いを重ねるにつれ、また新しい関係性が作られることにつながれば……と感じました。

二本松有機農業研究会の大内信一さんは「ストレスを覚えてまで食べることはしなくていい。食べられるという人には食べて欲しい」と言い、そのために自分たちが作った野菜の計測を行い、野菜を買ってくれる人に伝えています。参加者のひとりに、これまで二本松有機農業研究会の野菜を取っていたが、原発事故の後にやめてしまったという方がいました。しかし、福島県産以外の野菜はどれくらい汚染されているかわからず、二本松有機農業研究会の野菜は有機栽培で信頼でき、かつしっかり計測されているので、また野菜を取ろうと考え始めているということでした。

前述の佐々木さんからも、「実際の検査で福島産でも放射能が出ないものもあるが、それはほとんど知られていない」との発言がありましたが、一方で、基準値以上の数値が出るとメディアで大々的に取り上げられ、そちらのインパクトが強くなってしまうという実態があります。
大内さんが別の機会に、「放射能に対して正しく怯える」と発言されていたことがありましたが、それぞれが状況を冷静に受け止めて、それぞれの許容範囲の中で選んで食べることが当たり前になっていけばいいなと思います。そして、それが可能になるように、きちんとした情報開示が求められていると改めて感じました。

今回、様々な立場の人が一カ所に集まってそれぞれの苦悩を語り、それを共有することができましたが、これが一歩前に進むための始まりではないでしょうか。こういう機会を様々なところでつくり、つなげていきたいと思っています。

報告:吉澤真満子(よしざわ・まみこ/APLA事務局長)