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2015年4月テンペを作ってみよう!

みなさんは、テンペというものを食べたことがありますか?大豆を発酵させた食品で、元々インドネシアではとっても庶民的な食べものですが、近年は欧米や日本でもベジタリアンを中心に好まれるようになっています。東ティモールでも、このテンペとタフ(豆腐)は日常的に食べられていますが、いちばで買うのが当たり前。作り方を知っている人はあまりいません。

そんななか、エルメラのコーヒー生産者グループFitun Caetanoの女性たちがこのテンペを作る方法を学ぶワークショップを開催することになりました。

自分たちで大豆を植えるところから

理由のひとつとしては、日々の食事のたんぱく源不足があります。お肉はハレの日や特別な来客があった時にしか食べられない貴重なもの。淡水魚の養殖も地域内で始めていますが、それと合わせて、テンペを自分たちで作れるようになることで、市場での支出を減らすことができれば……!と、みんなで少しずつ集めたお金で大豆の種を買って栽培し、やる気を見せてくれました。

また、同じエルメラの女性グループの一つGATAMIRは、この間オレンジでワインを製造する活動が軌道に乗り始めています(詳細はこちら)。その彼女たちの経験を共有してもらうワークショップを2月に開催したことで、Fitun Caetanoの女性たちにも「わたしたちも同じようにできないはずがない!がんばってみたい!」という意気込みが生まれたのです。まずは、自分たちが食材として日常的に使えるようになって、栄養状況を改善できるように、そして将来的には地域のいちばで売れるように、という目標ができました。GATAMIRからも4人の代表者が参加し、一緒にテンペの作り方を学ぶ機会を得ることになりました。

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パウラさんの話に真剣に耳を傾ける女性たち。

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字が書ける若いメンバーは一生懸命メモ。

 

座学→実践→振り返り

ワークショップ1日目は、座学。テンペの栄養価の説明&日々の食事の栄養改善について(炭水化物ばかりになりがちな食事なので、たんぱく質やビタミンを意識的に取ること)、テンペの作り方、などの説明があった後、質疑応答タイムに。すべてが終了した後、実際のテンペ作りの前準備として、①欠陥大豆やゴミの除去、②計量、③浸水、の作業をおこなって、1日目は終了となりました。

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まずは大豆を選別。

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一晩浸水させて膨らんだ大豆。

 

なお、今回は、メンバー自身が種まきして栽培した地場産大豆と市販の大豆(米国産)の2種類を使用して、テンペの出来上がりを比較することにしましたが、座学では、実際には自分たちで栽培する方が好ましい理由(地域内の経済循環の推進、残留農薬の問題など)についても共有されました。

翌2日目は、朝早くから作業を開始。①前日から13時間の浸水しておいた大豆をそれぞれ茹で、②茹であがった大豆の薄皮を除去する作業に移りました。②は、必ずしも必要な作業ではないものの、品質の良いテンペを作るには、薄皮を取った方がいいとのこと。ただ、日本の大豆よりもかなり小ぶりなので(小粒納豆くらいの大きさ)、この②の作業が非常に大変で、子どもも入れて20人くらいで協力しておこなっても1時間半以上かかりました。女性たちは「1人じゃこんな作業絶対したくないわ、みんなでおしゃべりしながらだからそんなに大変じゃないけどね~」と口を揃えて話しており、逆に「協同」の力を認識する良い機会となったかもしれません。

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一晩浸水させた大豆を翌朝鍋にかけるところ。

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茹であがった大豆から、薄皮を取り除きます。

 

完了後、③水分を適度に飛ばし、④市販のテンペ菌をまんべんなくまぶして大豆と混ぜ、⑤計量しながら、プラスチック袋/バナナの葉っぱに詰めて成形、⑥風通しの良いところに並べる、というプロセスをすべて完了させたところで昼食休憩。その間、男性たちも興味深く作業を見学しながら、テンペをくるむバナナの葉っぱや櫛を作ったり、テンペを並べるための台を大工仕事で作ってくれたり、と色々な形で協力してくれました。

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テンペ菌を振りかけ、まんべんなく混ぜ合わせます。

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何だか味噌づくりの光景と似てますね~。

 

前述の通り、出来具合の違いを調べるために、地場産大豆、米国産大豆のそれぞれで、①バナナの葉、②プラスチックの小袋(小さな穴を開けたもの)、③プラスチックの小袋(何もしないまま)の3種類でテンペを作ってみました。インドネシアでも伝統的にはバナナの葉などが使用されてきましたが、近年ではプラスチックの小袋に入ったものの方が多くみかけます。

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立派なバナナの葉っぱ。さて、何に使うかわかりますか?

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ここでバナナの葉っぱが登場!発酵させるために大豆をくるむのです。

 

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上手く発酵するか、ドキドキ……。

昼食休憩後は、みんなで輪になって質疑応答や意見交換など、振り返りの時間。実際に作業してみての不明点や感想などを共有しました。先生のパウラさんからは「今日も色々な形を試してみたけれど、自分たちで工夫・研究することが大切。これが正解!ということはない。もし今日つくったすべてが失敗してしまったとしても、あきらめずにグループで挑戦してほしい」との激励がありました。

Fitun Caetano女性グループのリーダーであるフラビアさんからは「今回、このような貴重な機会を得られて、とてもうれしい。男性の手伝いだけではなくて、自分たちで収入を生み出すための一歩を踏み出せたことを誇りに思っています。まずは、子どもたち・自分たちが食べられるようにテンペを作っていきたいし、いずれは販売したいです」と意気込みが伝えられました。また、同行してくれていたPermatil事務局長のアタイさんからは「販売するにしても、まずは地域の人たちに売っていくこと、小さなところから始めることを考えたらいい。それから大豆をしっかり育てること。それによって地域の中で経済が回っていくことをめざしてほしい」とアドバイスが伝えられました。GATAMIRから参加した4人の女性も真剣にメモをとりながら作業に参加、「地域に戻って習ったことを他のメンバーとも共有します」と嬉しそうでした。

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達成感にあふれた良い表情!

はたして結果は……?

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上手く発酵しました!!!

作業が完了した翌々日の午前中、私たちはすでにFitun Caetanoを離れて別のコミュニティにいたのですが、一本の電話が入りました。「テンペになっているよ!どれも全部テンペになったの!でも一番上手く発酵が進んだのは、バナナの葉を使ったもの、その次が穴を開けたプラスチックだったわ!」と嬉しそう。この結果は、私たちにとっても嬉しいものでした。なぜって、バナナの葉であれば、地域にいくらでも生えていて無料で使えるし、食べ終わった後もプラスチックと違って土に還りますからね。実際に、食べてみての感想はまだ聞けていませんが、今回のワークショップをきっかけにFitun Caetanoの女性たちが自信を持って動き出せることを、東京から願っています。

報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)