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2017年7月20日、21日バナナ募金お届け先を訪問しました。

2017年7月に、バナナ募金のお届け先を訪問してきました。東日本大震災から6年以上が過ぎて、福島で生活する子どもたちはどのような様子なのか、伺ってきたことをお伝えします。

わかば幼稚園

床に描かれた絵。取り壊しでなくなってしまうのが残念!

福島市内にあるわかば幼稚園を訪問した日は、夏休みに入る前の最後の登園日。夏休みに入ると、お遊戯館の立て直しがあるとのことで、取り壊す前の記念に、建物の床一面に園児と保護者が描いた絵が。美術担当スタッフの方によるワークショップで作りあげたみんなの力作です。こうした取り組みを通じて、子どもたちが文化に触れる機会を作っている熱心な様子が伝わってきました。

幼稚園ではめずらしく、わかば幼稚園では給食を出しています。お弁当からの切り替えの直接のきっかけは震災だったそうですが、10年くらい前から子どもたちのお弁当の中身が気になりはじめたという園長先生。冷凍食品ばかりが詰められているお弁当を持参する子が多くなり、若い先生たちもちゃんとした食事をしていないことから、園で給食を出すことになったそうです。給食の中には、家で食べ慣れないようなメニューも出てきますが、2年目にはたいていの子がおいしく給食を食べられるようになるそうです。

あすなろ保育園

次に訪れたのは、あすなろ保育園。バランゴンバナナの生産者が来日時に訪問したり、APLAのツアーでもお世話になっている園です。山の中に位置しており、自然豊かであるがゆえに放射能の線量が高めでした。久しぶりに訪れると、園庭の脇にある山の斜面がコンクリートで覆われていました。これにより上方から流れてくる放射能を抑えられるとのこと。単なるコンクリートだとつまらないからと、その斜面に滑り台やトンネルが設置されていました。園内の除染は自分たちでできる範囲で実施してきたものの、周辺の森林の除染は自治体が担うそうです。あすなろ保育園の前の森林は今年に入ってからやっと除染作業がありました。また、除染した汚染物質は、園庭の中に埋められていましたが、突然連絡が入りその撤去作業が実施されたとのことでした。汚染物質を取り出すなど直接的な費用は国が負担するものの、作業車が入るための門の撤去及び再設置などの費用は自腹とのこと。6年経った現在も除染との闘いが続いている現状を聞きました。

フマイフマイ小学校から届けられた絵。

あすなろ保育園の玄関には、フィリピンの子どもたちが描いた絵画が飾ってあります。震災後の2012年、フィリピン・ネグロス島東州で発生した地震で被災した小学校へと、あすなろ保育園の皆さんが千羽鶴を折ってくれ(詳細はこちら)、そのお礼にフィリピンから届いた絵です。園長先生は、保育園の来客者の目にその絵が留まると、バナナを通じた出会いの話をしてくださるそうです。

聖愛こども園

線量を図った土を入れてプランターで野菜も作っていた。

最後に、南相馬市の聖愛こども園を訪問。到着すると3~5歳児の皆さんが待っていてくれました。歌で歓迎を受け、一緒にゲームを楽しみ、給食をいただきました。聖愛こども園にも以前バランゴンバナナの生産者が訪問しています。その時のことを覚えていて、バナナのお礼を英語で伝えようと練習してくれていました。先生の「せーの」の掛け声のもと、声を揃えて「Hello, thank you for the bananas. Good bye!」と上手に言えた子どもたち。後日、録画した映像をバランゴンバナナの出荷元のATPI社ヒルダ社長に送ったところ、大変喜んで、生産者や各島にいる出荷団体のパートナーたちにも伝えてくれるとのことでした。震災後からバナナを届けてきたことで、フィリピンとのつながりができつつあります。

6年経って…

今回訪問した3つの幼稚園・保育園では、それぞれ個別の状況もありますが、共通しているのは、給食に県産の野菜の取り扱いを検討し始めているものの(検査して食べてもよい範囲と分かっているもの)、依然として福島産の食べものを子どもに食べさせたくない親御さんもいて、先生方が思案されていました。また、現在の園児たちは、震災後に生まれた子どもたちです。外遊びの時間が限られて屋内で過ごすことが多かったことによる運動不足や体力低下、経験値が低いために精神的にも幼い傾向があることなど、震災によって様々な制約を受けるなかで育ってきた子どもたちの成長への影響があることも聞きました。それぞれの園のみなさんは、その時々でできる限りの対応をされてきています。「子どもはみんなの宝」「子どもたちにどういう未来を残すかが大人たちの仕事」。お話を伺った園長先生たちの言葉です。子どもたちが生活する現場で、一人ひとりと真摯に向き合って、できるかぎりのことをされてきている姿に心を打たれました。

さらに、保育士不足が大きな問題になっているそうです。東京圏でも保育士不足が言われていますが、福島の先生たちは東京へと流れていく傾向にあるのだそうです。待遇面などで恵まれているという理由からだそうで、東京在住の身として複雑な気持ちになります。とはいえ、日本社会全体が抱えている保育にまつわる課題と、福島の現状とが重なっての難しさがあることが分かりました。

バナナ募金ができること

今回の訪問には、バランゴンバナナを送り続けてきたバナナ募金を継続する意味について、受け手である保育園や幼稚園の皆さんがどう考えているかを率直に聞きたいというもうひとつの目的がありました。そして見えてきたことは、バナナ募金を通じて、つながった園の皆さんに対し「福島を忘れていない」というメッセージを伝えられる、別の地域に暮らす私たちが福島に関心を持ち関り続ける窓口となりうる、ということでした。また、海の向こうからやってきたバナナの生産者との交流は子どもたちにとって大きな出来事で、心に刻まれる体験になるようです。バナナを通じた食育にもなります。こうした関係づくりこそが、バナナ募金を継続していく意味があるのではないかと感じています。

報告:吉澤真満子(よしざわ・まみこ/APLA事務局長)