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2024年4月21日パレスチナ農業開発センター(UAWC)より:イスラエル人入植者による集団的暴力についての会見

パレスチナ農業開発センター(UAWC)は、2024年4月21日(日)、ヨルダン川西岸地区のラマッラー県アル・ムガイール村で記者会見を開きました。記者会見は、4月12日から16日にかけて、イスラエル占領軍の保護下にある武装したイスラエル人入植者1,500人以上が、ヨルダン川西岸地区一帯で大規模な集団的暴力を実行した事件について伝えるために開かれました。

 

UAWC国際アドボカシー・オフィサーのヤスミーン・エル=ハサンさん、UAWCロビー活動・アドボカシー・ユニットのディレクターであるモアイヤド・ブシャラットさん、アル・ムガイール村の農民であるガッサン・アブ・アリアさん、アル・ムガイール村の診療所で看護師をしているニダ・ナーサンさん、そして村議会の議長であるアミーン・アブ・アリアさんの5名が、それぞれの立場から事態の緊急性と深刻さを強調しました。

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以下、5名のお話の要点ならびにそれぞれが記者会見で強調したメッセージの引用です。

モアイヤド:パレスチナ人に対するイスラエル人入植者の組織的攻撃が激化しており、4月12日からの攻撃では、複数の死者と甚大な物的損害をもたらしている。今回の攻撃による経済的損失は、1000万シュケル(4億1000万円相当)を超える。入植者たちは、住宅、農業インフラ、家畜、救急車までも攻撃の標的とした。加えて、イスラエル占領軍と入植者は、パレスチナ人の農地へのアクセスを意図的に妨害しており、人びとの生活を妨げている。

“これらの攻撃の背景には、イスラエル政府、特にベン・グヴィール国家安全保障相とベザレル・スモトリッチ財務相の2人の閣僚が、ヨルダン川西岸地区のエリアCにおいてイスラエルの入植者や入植者運動が組織的攻撃を加速させることに許可を与えているという事実があります。また、2023年10月7日から現在に至るまで、イスラエル人入植者による攻撃、また都市や難民キャンプと農地の間にある840以上の軍事検問所によって農地への立ち入りが禁止されているため、パレスチナ人がオリーブの畑や果樹園の65%以上に立ち入ることができないことを、私たちは目の当たりにし、注視しています。”

ニダ:イスラエルによるガザ地区での虐殺戦争以降、入植者による攻撃は前例のないレベルにまで激化しており、住民は日々恐怖に怯えている。女性や子どもを含む一般市民が無差別に標的にされている。入植者が使用した可燃性の液体によって村の家屋、車両、農地が炎に包まれ、重度の火傷を負った人びとが多数いる。自身を含む医療従事者は、無差別の銃撃と混乱の中でも救護のために尽力したが、検問所で救急車が長時間留め置かれるなど、意図的な妨害によって助かるはずだった命が奪われることにも直面した。

“子どもも女性も男性も、全員がIII度熱傷(訳者注:表皮、真皮、皮下脂肪層の3層すべてに損傷が及び、汗腺、毛包、神経の末端部も破壊されるようなひどい火傷)を負っていました。イスラエル人入植者が使っていた可燃性の液体は、あらゆるものをあっという間に燃やしてしまうこれまでに見たこともないものでした。想像を絶する速さで体全体に広がる様はまったく普通ではなく、不自然なほどでした。そうしたなかで私たちは誰を最初に助けるべきかわかりませんでした。子ども?女性?私たちは今までの人生で見たこともないような極端な熱傷を目の当たりにしたのです。イスラエル人入植者が使った可燃性の液体は、耐えられないほど効果的で素早く、視界に入るものすべてを焼き尽くします。家々、金属製のドア、岩の壁……すべてを溶かし、爆発させます。この液体が何なのかわかりませんが、村のあらゆるものにかけられ、数秒のうちに、すべてが炎に包まれました。”

アミーン:アル・ムガイール村の住民が長年にわたって直面しているイスラエル人入植者の侵略と土地の接収について、歴史的背景を説明。イスラエルは、村の生計にとって農業が極めて重要であることを知った上で、戦略的にパレスチナ人家族を土地から追い出そうとしている。圧倒的な困難にあっても、パレスチナ人と先祖伝来の土地との根深いつながりは揺るがない。

“アル・ムガイール村は、羊・山羊・牛の放牧や(オリーブなどの)季節的な農業で知られていて、村の収入源は、この地域に100%依存しています。入植者専用道路の背後にある土地が、村人にとっての主な収入源となっているのです。悲しいことに、占領軍はそれを知っていて、戦術として使っているのです。かつて彼らは農民を捕虜にし、土地から追い出しました。そして、極端な罰金を科したのです。羊を没収したり、拘束したりもしました。言い換えれば、私たちは長年にわたり、様々な形の攻撃や侵略を経験してきたのです。”

“私たちの村としてのメッセージは、どんな代償を払っても、私たちは自分たちの土地で揺るがないということです。なぜなら私たちパレスチナ人は、子どもたちとオリーブの木を対等なものと考えているからです。子どもたちと土地に対する愛情はひとつであり、同じものなのです。”

ガッサン:イスラエル人入植者の執拗な攻撃によってパレスチナ人農民の生活基盤を奪われている。入植者は占領軍と連携して、組織的な攻撃を行っている。生活を支える家畜や農具を失った農民への支援、攻撃によって壊滅的な被害を受けた人びとが生活を再建するための支援が必要である。

“私と私のコミュニティ、そしてパレスチナ人一般と土地との関係はとても深いものです。私は祖父から、祖父は彼の祖父から、その彼もまた自分の祖父から、そうやって代々この土地を受け継いできたのです。土地は、私たちの遺伝子、私たちの心に深く根ざしている私たちの一部なのです。ここが私たちの故郷であり、ここ以外に私たちの居場所はありません。私たちは愛情を持って、粘り強くこの土地にとどまります。支配、占領、植民地主義という要素以外、この土地とは何のつながりもない別の国からやってきた入植者たちに屈したり、土地をあきらめたりすることはありません。(中略)あと100回攻撃されるかもしれないとしても、私たちはこの土地を離れません。攻撃はさらに激しくなることは分かっています。しかし、農民として、この村の人間として、私たちはこの土地を離れることはありません。”

ヤスミーン:入植者による集団的暴力は、セトラー・コロニアリズム(入植者植民地主義)支配という文脈の中で起こっている。入植植民地主義の基本は、土地の収奪であり、それが現在起こっているすべてにつながっている。国際社会、特に米国が、イスラエルへの軍事資金提供や積極的な支援を通じて、イスラエルの入植者植民地プロジェクトを永続させていることに加担している。

“ガザ地区では、イスラエルの占領がこれらすべてを破壊しました。そしてヨルダン川西岸地区では、イスラエル占領軍がアル・ムガイール村のようなパレスチナ人コミュニティの孤立を作り出そうとしているのです。パレスチナの食料システムと土地を標的にし、混乱させ、破壊することは、イスラエルの入植植民地主義の戦術的戦略です。”

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なお、記者会見全体の記録の日本語訳(PDF)をダウンロードいただけます。16ページというボリュームですが、日本のマスメディアではほとんど伝わってこないヨルダン川西岸地区の現状についての生の声です。一人でも多くの方に届くことを願っています。そして、UAWCのヤスミーンさんの訴えにあるように、日本からもパレスチナの人びとの草の根の努力を支援し、正義のため・抑圧されたコミュニティのために共に立ち上がりましょう。

また、記者会見の動画(英語)も公開されています。5名の方が実際にお話されている様子をご覧になりたい方は、ぜひこちらのリンクにアクセスください。

まとめ:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)